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YUKIPEDIA

小二で挫折、中二病を引きずり、高二で転落、現在第二の人生を歩む!

『並行』(6)―本当にバカなのは誰だ?

創作-並行

 バカだなこいつ、私はそう思いながら下北を右肩で支え、夜道を歩いた。

 バーからの帰りには酔っ払った老人に客引きの女、スカウトの兄ちゃん種々雑多、共通して言えるのは『危ない』人々で溢れかえっている道を通らなければならなかった。恐らく途中で音と気配もなく姿を消した中村と別田も、一緒に帰っていることだろう。そうでないと中村は仮にも女子大生、ひとりでこう言った経路を辿ることは大変に『危ない』ことだし、それを放っておいた私達一同も『危ない』ことになってしまう。

 私の肩上に、下北が頭を乗せた。

「あの、下北さん?足が縺れていますが」

「ううううううううえ、上野、いや、ささささささささつ、さつきさん。僕は大丈夫です」

「大丈夫では、ないでしょう?」

「ささささささささ、さつきさん、これからどこに行きますか?」

「どこって、下北さんは大学寮にお住まいでしょう?」

「いえ、いえいえ、もう門限はとっくに過ぎています。外出届は出してきました、さささささつ、さつき、さん」

「どこって言われても」

「ああああああああ、危ない場所ではありませんよ!勿論」

 私の考えていたフレーズ、『危ない』を口に出され、一瞬体が硬直した。こいつ私の考えを読んでいるのでは?そう思ったのだ。

 その具合は下北にも伝わったらしく、言われた。

「いいいいいいいい、行っても、良いんですがね」

 私の硬直は完璧に誤解されたらしい。

「いえ、それは話が早すぎます。どこって、俗に言う宿泊施設でしょう?」

「はははははははは、はい」

 男はみんな狼、そう言う歌があったが、本当らしい。公務員志望、と言うと物凄く独断と偏見に塗れた言い方だけれども、そう言った真面目純朴青年いつもジャケット着用でゼミに出ている、が、私をどもりながら性的に誘っている。困ったものだ。世も末か。世紀末は通り過ぎてしまったけれども、世界の末期は続いているらしい。私の頭の中も、いつも終わりだけれども。

「ああああああああ、あの、さつき、さん?」

「はい、何でしょう?」

「ぼぼぼぼぼぼぼぼ、僕と、行ってくれますか?」

「どこに?」

「だから、その、」

 そう言って下北は酒臭い息を私の耳に吐いた。どうやら酒の勢いもあるらしい。

 私の考えていることはこうだった。

 別に、自分に害がなくて自分の為になることだったら、世の倫理に反したことでも抵抗なくやる。だから下北が『死に至る病』に連結される結果となるのだったら、私は泊まることを惜しまない。相反して自分なんてどうにでもなれ、と言う気持ちもあった。更に、下北のような身近な存在に想われることが、それほど私にとって苦ではなかった。理由としては、自分の地位を優位に立たせることが出来るから。

「下北さん?私は、」

 私がそう言った瞬間、肩に掛かる重みが増した。下北は眠っていた。気を失ったのかも知れない。どちらとも取られるその重さは、私にとって大変に荷物だった。

「ああ、もう嫌。クソっ」

 独り言を呟いて、私は左右にネオンサインや呑み屋やキャバレーのある道を歩く。力任せに下北を引きずって。その異様な光景に、『危ない』皆さんも声を掛けられなかったようで、驚いた顔をして左右に道を空けた。

 

 皆考えが甘いよ。

 一番『危ない』のは私だってこと、分かってる?

 目的のホテルは、すぐそばにあった。

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